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2024.2.23 息塾111回
皮膚は「免疫応答の最前線」
皮膚の最も外側になる表皮組織には、ランゲルハンス細胞と呼ばれる免疫細胞が存在しており、表皮の2~5%を占めている。
外部から侵入するウイルスや細菌、科学物質などの高原を枝状の突起で取り込む。
体内に侵入した異物を殺傷したり炎症などを引き起こすことで排除している。
汗には薬物の排除機能といった腎臓のような役割やねIgAという抗体、細菌を殺傷する抗菌ペプチドも含まれている。さらに、汗のpHは弱酸性となっており、皮膚が細菌などの外的から身を守る重要な役割を果たしている。
外界に常時接している皮膚は、体外環境の変化をいち早くモニターする知覚機能がある。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感のうちで皮膚が担うのは触診ですが、「皮膚には視覚・聴覚はもとより、電磁波まで感知し、それらの情報処理も行う機能がある。」と考えられている。
・皮膚は免疫器官である
各層やタイトジャンクションなどの皮膚の構造物によって、外から病原体や異物が侵入しないように物理的にガードされている。ウイルスや細菌などの病原体を体内に侵入させたのでは、体内の恒常性は失われて、病気になったり、命を失いかねません。皮膚の中には二重、三重の防御機能が構築されている。
第一の防御壁である「物理的障壁」そして第二、第三は「免疫機構」である。
皮膚の表皮には、各層などの物理的な防御機構を突破した異物を捕らえて、適切な免疫応答を誘導するランゲルハンス細胞が分布している。
免疫の第一の防御壁「自然免疫」
免疫には「自然免疫」「獲得免疫」の2種類がある。
自然免疫は人間に生まれたときから備わっているしくみで、免疫細胞が、自分以外が有する特徴的なパターン構造をいち早く認識することで、非自己の排除を速やかに行う。
獲得免疫は、実際の感染やワクチン接種によって病原体などの異物に特異的に対応した攻撃方法を後天的に獲得したものである。
自然免疫は原始的で効果が低いし思われがちだである。しかし、自然免疫はすぐに臨戦態勢に入ることができるうえに、近年、自然免疫反応を繰り返すことで免疫反応の効果を高める「訓練免疫」という仕組みが解ってきた。病原体が強くなければ、自然免疫だけで病原体を撃退することは可能である。自然免疫だけでは収まらないと遅れて獲得免疫が対応するという二段構えの対応となる。
自然免疫はそれだけでなく、獲得免疫系の誘導にも深く関わっている。自然免疫は獲得免疫を発動させるスイッチの役割をはたしている。
・自然免疫の主役たち
自然免疫には、好中球、好酸球やマクロファージ、樹状細胞などさまざまな免疫細胞がかかわっている。
好中球は、血液中の白血球全体の50%以上を占める白血球である。しかしながら、定常状態の皮膚にはそれほど多くは存在しない。
しかしひとたび皮膚で炎症が起こると、血液から皮膚組織に速やかに移動する。
好酸球は、呼吸器や腸管などに存在する白血球の一種で、殺菌性物質を放出して寄生虫を処理したり細菌を排除したりする役割を持つ。近年ではアレルギーや喘息などの発症にも深く関わっていることが解ってきた。
マクロファージは、免疫系の「掃除業者」として役割を果たしている。死細胞やその破片、体内に生じた変性物質や侵入した細菌などを捕食して消化する。
樹状細胞は、好中球、単球、マクロファージなどと同様に病原体や異物を貪食し抗原を提示
する能力を持っている。
・2024/3/26 息塾112回
免疫の第二の防御壁「獲得免疫」
物理的バリアを突破した病原体を迅速に撃退できる自然免疫ですが、血液中に入った小さい病原体や、細胞に感染して内部に入りこんでしまった病原体を攻撃することは苦手である。「第二の防御壁」として活躍してくれるのが獲得免疫である。一度侵入した病原体の情報を記憶し、再び侵入されたときにいち早く対処できるように学習できる特徴がある。
・抗原を提示して免疫記憶する細胞
自然免疫と獲得免疫の働き方ですが、まず自然免疫が発動され、それに続いて獲得免疫が活動する。両者は独立して働いているわけではなく、密接に連携している。
獲得免疫のしくみは、ます、体内へと異物が侵入するとマクロファージや樹状細胞などの貪食細胞が抗原となる病原体やたんぱく質を食べて分解する。そして樹状細胞は、リンパ節に移動して、「免疫の司令塔」の役割を果たしているヘルパーT細胞に吞み込んで分解した抗原を提示して、病原体や異物が侵入したことを伝達する。報告を受けたヘルパーT細胞やB細胞を活性化して、獲得免疫機構を発動させる。
皮膚のバリア機能を突破はしてきた病原体や異物は最初に遭遇するのが表皮の95%以上占める表皮角化細胞である。この細胞は、皮膚の生物的バリアとなる角層を形成するための起点となる。ランゲルハンス細胞は、この表皮角化細胞に寄り添うように存在している。ランゲルハンス細胞は、表皮角化細胞専属の「ボディーガード」である。他の免疫細胞のように骨髄から出動していたのでは即時対応が難しいため、表皮組織に棲み着いている。
表皮角化細胞が主に曝露される抗原としては、タンパク質抗原とハプテンと呼ばれる科学物質があげられる。
タンパク質抗原は、ダニ、ハウスダスト、花粉などがあげられる。重量平均分子量とサイズが大きいため、バリア層が破壊されない限り、皮膚の角層にとどまる。こうしたタンパク質抗原は、アトピー性皮膚炎や花粉症、喘息などのアレルギー性疾患の原因になることが多い。
これに対して、ハプテンは、漆かぶれの原因となるウルシオールや、保存料、香料、薬剤、あるいは金属イオンなどがあげられる。ハプテンは分子量が1000以下なので、タイトジャンクションなどの物理バリアを突破し、真皮にも入り込む。
ランゲルハンス細胞と樹状細胞の役割分担がある。表皮細胞にとどまるタンパク質抗原は、ランゲルハンス細胞が担当し、表皮組織を突破して真皮に入り込むハプテンについては、樹状細胞が担当している。
・角層に棲む免疫細胞たち
表皮角化細胞から法室されたサイロカインは、リンパ球やマクロファージを活性化させ、こうした免疫細胞からあらたなサイトカインが分泌されて、炎症を引き起こす。炎症とは、病原体やアレルギーの原因となる抗原や死んでしまった自分の細胞を排除するための反応の結果である。臨床的には、皮膚が赤くなったり、腫れて熱を持ち、かゆみや痛みを生じる。
炎症反応は、病原体や異物を排除するために必要不可欠な生理的な反応だが、これが過剰に働いたり、慢性的になったりすると様々な不具合をもたらす。その典型がアトピー性皮膚炎である。たとえば、物理的バリアで重要な役割を担っている表皮角化細胞をひっかき行動で傷つけたり、アレルギー反応を引き起こす物質が表皮角化細胞に付着すると、胸腺間質性リンパ球新生因子と呼ばれるサイトカインが大量に生産される。これが真皮に存在する樹状細胞に刺激を与えて、アトピー性皮膚炎の発症につながる。
表皮角化細胞が紫外線を浴びると、免疫抑制が起る。紫外線による免疫抑制を利用して、紫外線照射によって、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの治療が行われている。免疫の過剰発現によってかゆみや炎症反応が緩和される。
表皮角化細胞が存在する表皮組織は、外部からの異物や刺激に最初に影響を与えられる部位であることもあり、皮膚免疫のさまざまな反応の起点となる。皮膚免疫には、外的刺激→表皮角化細胞→樹状細胞→T細胞を結ぶ多彩なネットワークがあり、表皮角化細胞が刺激を受けることで、さまざまな皮膚免疫応答が発動される。
生体防御器官としての皮膚の役割は、皮膚が身体を覆う単なる薄皮ではなく、物理的バリアとして皮膚免疫などさまざまな手立てで身体を守っている。
2024/4/9息塾113回
「感覚器官としての皮膚」
皮膚は「感覚器官」である。皮膚の表面や内部にはさまざまなセンサー(感覚受容器)埋め込められており、さまざまな情報を脊髄や脳などの中枢神経に送っている。
ヒトは、五感と呼ばれる異なる感覚機能がある。アリストテレスが定義した「五感」には、視覚、聴覚、触覚、味覚があるが、特に皮膚が関連するのが触覚である。私たちはものに触れて、その手触りからさまざまな情報を得ている。
・感覚の分類
皮膚には、外界の環境変化を捉えるセンサーとして痛覚、触覚、圧覚、振動覚、温度覚など情報を脳やせき髄など中枢神経に送っている。
感覚には3つのグループに分類される。
1. 特殊感覚・・・頭部にある感覚器が受け取る情報により生み出される感覚を「特殊感覚」という。具体的には視覚、聴覚、味覚、嗅覚、平衡感覚が挙げられる。
2. 体性感覚・・・皮膚にある感覚器が関係する表在感覚と筋や健、関節などの運動器が感じる深部感覚を合わせて「体性感覚」という。表在感覚は「皮膚感覚」ともいわれ、外部から変わった「持続した押される刺激」(機械刺激)や温度変化などを、皮膚に埋め込まれたセンサーが検出することで生み出される感覚である。触覚、痛覚、圧覚、温覚、冷覚などがある。表在感覚によって、わが身に迫った危機を回避したり、手に触れたものがどのようなものかを識別する。
3. 内部感覚・・・吐き気や空腹感、尿意、内臓の痛みなど、胃や心臓、膀胱など内臓が生み出す感覚である。身体の奥で生まれる感覚ですが、筋や健、関節などに起こる「深部感覚」はこれに含まれない。
・感覚には歪がある
感覚受容器の分布には大きな偏りがあるため、刺激を感じる部位と鈍感な部位がある。
指と大腿では、同じものに触れた場合でも感じ方が異なる。指の皮膚を刃物で切って出血した場合、わずかな傷でも激しい痛みを覚える。一方、大腿に生じた切り傷で生じる痛みは、指の切り傷ほどの痛みはない。このように痛みの感受性は、体の部位によって異なる。私たちが感じる表在感覚は、必ずしも実際の表現面積を正確に反映したものではなく、かなりの歪みが加わっている。
皮膚のセンサーには2種類ある 6/7インスタ
皮膚の感覚受容器には大きく分けて2つのタイプがある。終末部に特殊な小体を作る「終末小体」と神経線維の末端である神経終末が枝わかれして終わる「自由神経終末」である。
1、 終末小体
特殊構造を持つ「終末小体」の代表格が、軽微な触覚を受容する「メルケル小体」、皮膚を通して圧力や振動などを感じる「マイスナー小体」「パチニ小体」、弾力を感じ取る「ルフィニ小体」などがある。
皮膚に加えられた「持続した抑えられる刺激」を受容する「メルケル小体」は表皮の一番深い部分にある。メルケル小体によって、そっと触れた刺激でも敏感に応答でき、わずかな凹凸も感知できる。
終末小体は、皮膚の深い場所にあり、擦り傷などの物理的外傷があってもダメージを受けにくい。メルケル小体があるのは、指や手のひら、足の裏、口唇などに集中している。
マイスナー小体は指先に特に多く存在し、圧力に対し速やかに反応し、手足に触れる物のすべりを感じ取る。メルケル小体と協調して、物質の形状などの空間把握に必要な情報を提供している。
2、 自由神経終末
神経の末端が枝わかれした「自由神経終末」の代表各が、毛包を取り巻く「棚状神経終末」である。毛の微細な動きを感知して、その情報を中枢に送る。毛に接触すると毛包のまわりにある自由神経終末が刺激され、情報が脳や脊髄に伝えられる。
2024/4/23息塾114回
皮膚の病気を考える
最も患者数が多い皮膚疾患は、第1位は「その他の湿疹」です。湿疹とは皮膚の表面に起こる炎症を総称した病名で、「皮膚炎」と呼ばれる。多くの場合、赤いブツブツができて、かゆみを伴う。湿疹は、単独の疾患名というよりは、湿疹反応を起こす症候群として理解する。湿疹は、アトピー性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹、接触皮膚炎などさまざまな皮膚疾患をひとくくりにした皮膚炎の症候群である。
原因はわからなくても、皮膚に炎症のある疾患は湿疹という診断名がつけられる。湿疹には、それぞれ原因があるが湿疹と診断するのは原因がわからないことを意味する。
第2位は、「アトピー性皮膚炎」である。皮膚科を受診する10人に約1人がアトピー性皮膚炎の患者である。
第3位は足白癬。カビの一種である皮膚糸状菌がヒトの皮膚の外層の最外層である角層にとり付いて起こる皮膚疾患。白癬は、タンパク質の一種であるケラチンを栄養源として、角層に棲み着いてしまうので、長期間の治療が必要である。
・皮膚から重篤な病気が解る
病気は、「鵺」に例えられる。鵺は、頭が猿、胴体は狸、尾は蛇、手足は虎という奇怪な物の怪で、からだの一部だけを見ていてもその本態を捉えることができない。病気もこの鵺によく似ていて、私たちに多彩な症状を見せますが、その症状を生み出している、病気の本体を抑えることは容易ではない。病気という様々な鵺を、症状を手がかりにしてひきずり出さなければならない。
「皮膚は全身を映し出す鏡」と呼ばれるように、健康状態が悪くなると、多くの病気で、最初に皮膚に異常が現れる。
・厳格な皮膚免疫、おおらかな腸管免疫
「経皮感作」と「経口免疫寛容」は、アレルゲンを通じた「免疫誘導」という点では共通しているにもかかわらず、前者がアレルギー反応、後者が免疫寛容という正反対の結果をもたらすのはなぜか。これは「皮膚免疫」「腸管免疫」という2つの免疫機構の違いを反映している。経皮感作は皮膚免疫によって誘導され、経口免疫寛容は腸管免疫によって誘導されたものである。皮膚免疫ではデフォルト(標準)の免疫反応はアレルギー反応である。皮膚は、細菌やウイルス、寄生虫、有害な化学物質やホコリなどに常時さらされている。そのため皮膚のバリア機能を突破され、体内にこうした異物が侵入するとゆゆしき事態になるため、これを他たちに除去する免疫反応が発動されるようにプログラムされている。これは功利的な反応である。しかし危険性のある異物を迅速に排除するという免疫機能の大小として、本来、生体にとって無害な物質にも過剰に反応してしまうアレルギー反応という厄介な副産物を得た。
一方、腸管免疫では免疫寛容がデフォルトになる。実は、口腔→食堂→胃→小腸→大腸→肛門に至る腸管は、体の内部にあるように見えながら、実は外界と接した体外の器官である。腸管で体外と体内を隔てているのが腸粘膜で皮膚と何ら変わらない。皮膚と腸管の最大の違いは、異物への許容度である。腸管には、経口摂取した院食物が、小腸で栄養分として取り込まれる。皮膚のように異物だからといって排除するような杓子定規なアレルギー反応を起こしていたら、栄養分が摂取できず栄養失調になってしまう。免疫応答を和らげて体内に取り込まなければならない。これを可能にするのが免疫寛容である。
皮膚免疫と腸管免疫のバランスが崩れて、皮膚免疫側に振れてしまうと、過剰なアレルギー反応が起きてしまう。アトピー性皮膚炎をはじめとする病的なアレルギー疾患は、このバランスが崩れた状態である。
皮膚バリア、アレルギー炎症、かゆみ、という3つの要素が互いに連動しながらアトピー性皮膚炎の発症機序に関与している。ひとたびこの均衡が崩れてしまうと、連鎖的に症状が悪化する歯車が継続してしまうので、医学的には崩れた均衡を取り戻すアプローチが重要になる。
2024/5/7息塾115回
アトピー性皮膚炎 -現代人を悩ます皮膚の難病-
・この40~50年でアレルギー疾患が急増したのはなぜ
現代になって患者が急激に増えているのがアレルギー疾患である。アレルギー疾患とは、特定の抗原に対して免疫反応が過剰に働くことで起る病気である。アナフィラキシーショックや重症の喘息を除けば、生死に関わるような重篤な病気ではないが、ひとたび発症するとQOLが著しく低下する。
1961年にはじめて報告された花粉症の患者数は年々増加の一途をたどり、いまでは、日本人の約3人に1人は花粉症にかかっているといわれる。このほかにも、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、気管支喘息など、さまざまな疾患がある。日本人の2人に1人が何らかのアレルギー疾患にかかっているため「国民病」とも呼ばれる。
アレルゲンが身体の中に入ると、異物とみなさして排除しようとする免疫機能が働き、IgE抗体がつくられる。そして、再度体内に入ると、ヒスタミンなどの化学物質をため込んだ肥満細胞の表面にあるIgE抗体とアレルゲンが結合することで、肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が大量に放出され、アレルギー症状を引き起こす。
身を守るうえで必須な生体防衛システムである「免疫」機構が、本来、体に害を及ぼすことのない物質や食品に反応して、過剰な免疫応答するのはなぜか。
アレルギー疾患に限らず、おおくの病気を発症は遺伝的要因と環境要因が複合して発症する。しかし、40~50年程度で遺伝子がアレルギー疾患を発症しやすいタイプに変異したとは考えにくく、急増の要因は、生活様式や住環境などの環境要因の変化と考えられる。
有力視されているのが「衛生仮説」という考え方である。環境衛生が劇的に改善された結果、細菌やウイルス、寄生虫や汚染物質の少ない、清潔すぎる環境で生活することになったことで、免疫が訓練されなくなり、特定のアレルゲンに対して過剰な免疫反応を起こりやすくなったという説である。
抗生物質を乳幼児に過剰に投与すると、腸内に棲む常在細菌叢が変化するため、アレルギーになりやすくなるという報告がある。腸内には、約40兆個、重さ約1.5㎏の細菌が棲み着いており、免疫応答にも関与しているといわれている。抗生物質を投与すると、腸内で共棲していこうとした常在菌が取り除かれて、バランスを崩し、腸内の免疫応答が異常きたして、アレルギー反応を起きる説もある。
・アレルギーなぜ起こるのか?
アトピー性皮膚炎は、皮膚に症状が出現する典型なアレルギー疾患である。アレルギー反応が起こるのは、特定の抗原を取り込んで、その抗原に対し過敏に反応する「感作」が起こる必要がある。
・免疫の司令塔には2種類ある
「免疫の司令塔」となるヘルパーT細胞は、機能によって2種類に分類される。ウイルスや細菌などを排除する免疫反応にかかわる「Th1細胞」と、寄生虫を排除する免疫反応にかかわる「Th2細胞」の2種類あり、アレルギー反応には主に後者がかかわっている。近年、後者がかかわる炎症を2型炎症と呼んでいる。
この2種類のT細胞は、もともとはナイーブT細胞という未熟なT細胞から分化したものである。Th1細胞は、ウイルスや細菌を取り込んだ樹状細胞が提示する抗原と結合する刺激によって、ナイーブT細胞から変化したものである。これに対して、Th2細胞は、寄生虫などを取り込んだ樹状細胞が提示する抗原と結合する刺激によって、ナイーブT細胞から変化したものである。
Th2細胞の活性化は、寄生虫排除に重要なのですが、ヒスタミンを放出する肥満細胞に結びつくIgEを増やしてしまうため、アレルギーの原因になってしまう。Th1細胞とTh2細胞は、それぞれの体内環境に応じて、お互いの機能を抑制し、1種の平衡関係をたもっており、このバランスがどちらかに傾くことにより、特有の疾患が発症しやすくなる。アレルギー疾患の患者は、このTh2細胞が優勢になることでアレルギー症状がでると考えられている。
2024/6/4息塾116回
皮膚にかかわるアレルギー疾患として代表格といえるのが「アトピー性皮膚炎」である。1923年に目・鼻・気管支・皮膚などに多彩な炎症が発言する、原因不明の遺伝性の先天性過敏症を発見する。アトピー(atopy)は「特定されない」「奇妙な」という意味のギリシャ語に由来される。
花粉症と同様に1960年以降、日本でもアトピー性皮膚炎の患者数は急増し、厚生労働省の定点調査では2014年時点で約45万人との推定値がある。ガイドライン2008によると4ヶ月から6歳では12%前後、20~30歳代で9%前後の頻度で認めることが明らかになっており、実際のアトピー性皮膚炎患者数は数百万人いると考えられている。世界中では約2億3千万人いると推定されている。
・アトピー性皮膚炎の発症原因
アトピー性皮膚炎の患者の多くはアトピー要因を持つことが知られている。アトピー素因とは、家族歴、既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎など)があること、またはIge抗体を生産しやすい素因を指します。アトピー性皮膚炎の病気の本質は、湿疹ができやすい体質にある。ただし、アトピー性皮膚炎の発症機序は複雑ですべてが遺伝的要因で決まるわけではない。皮膚バリア機能、アレルギー炎症、知覚、環境要因、発汗などの要素がかかわっている。
・アトピー性皮膚炎の臨床症状と診断
診断は、発疹の特徴ならびにその経過で判断する。①かゆみ、②特徴的発疹と分布、③慢性・反復性の経過(乳幼児では2ヶ月以上、そのほかでは6ヶ月を慢性とする)の3つの基本的項目を満たしたものを、アトピー性皮膚炎と判断する。
また、アトピー素因の判定には、血中の好酸球数、血清中の総IgE値および特異的IgE値の測定が有用である。これらの値がたかいほど、アレルギーを発症するリスクが高くなる。重症度を判定する際に有効な指標となるのが、血清LDH値やTARC値である。前者は血清中に含まれるLDH(乳酸脱水素酵素)の値である。LDHは、細胞の中で糖をエネルギーに変換する際に必要な酵素で炎症が悪化して皮膚の細胞が破壊されると、上昇することが解っている。後者のTARCは、(胸腺および活性化制御ケモカイン)の略称である。
ケモカインは、免疫細胞から分泌される情報伝達機能のあるタンパク質(サイトカイン)の一種で、免疫細胞を局所に遊走させる作用がある。TARCは、アレルギー炎症を誘発するリンパ球(Th2細胞)を患部へ引き寄せる作用がある。そのため血中のTARC濃度は、アトピー性皮膚炎の重症度を把握する目安として有用である。
・アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療目標は「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること」とされている。
アトピー性皮膚炎を根治させる薬剤はない、適切な薬物療法で症状が安定した状態が維持できれば、寛解も期待できる。治療方針は、ステロイド剤やタクロリムス軟膏、デルゴシニブ軟膏による抗炎症作用と、保湿剤による皮膚バリア機能の改善が中心である。最も重要なポイントは、炎症の初期に十分な強さを有するステロイド剤を用いて炎症を抑えることである。
ステロイド剤については、使い方を間違えると副作用が生じることもある。そのためには「ステロイド剤は有害。決して用いてはいけない」と強弁する民間療法の信奉者も少なくありません。エビデンスの乏しい情報を信じこんでしまう患者も多い。
ステロイド剤は副作用もあるが、適切な量と使用期間さえ守れば、副作用も少なく安全である。むしろ、治療効果の高いステロイド剤を使わないと、アトピー性皮膚炎を落ち着かせるのは難しく、症状の慢性化を招く危険がある。
・プロアクティブという考え方
アトピー性皮膚炎では炎症が軽快して一軒正常に見える皮膚も、組織学的に見ると炎症細胞が残っており、再び炎症を引き起こしやすい状態にある。そのため、急に外用薬を塗るのをやめてしまうと、再び炎症が起きてそれに対して外用薬を再び塗ることを繰り返される。こうしたアトピー性皮膚炎の特有の病態に対した新しい治療として「プロアクティブ療法」がある。外用薬や内服薬で症状が落ち着き寛解状態になったあとも、定期的にステロイド外用剤を塗ることで再発を防ぎ最終的に保湿剤のみでコントロールをめざす治療である。
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