心身症というのは、ストレスなど心理的な要因が大きく関わって、それが原因となって体に病気が起こるものです。

 

≪心身症には、いろいろな病気が含まれる≫

昔から「病は気から」とか、「心身一如」といった言葉があります。

 

体の病気にかかるのは、まず精神的な原因が関わっているという意味ですが、これは決して大袈裟な表現ではありません。

 

たとえば、仕事上のストレスが続いた結果、ひどい胃潰瘍になってしまったり、人間関係に悩んでいるうちに、持病だった気管支ぜんそくがひどくなったりといった例は決して少なくありません。

 

このように、身体の病気であっても、心理的・社会的な因子が密接に関わって起こる病気を心身症といいます。

 

ですから、「心身症」というのは、1つの病気の名前ではなく、ある病気の成立や経過自体に、心理的・社会的因子の関わりが強く見られる状況そのものを指しているのです。

 

心身症に該当する病気が非常に多いので「病は気から」という考えが決して大袈裟ではないということが納得できると思います。

 

ただ、それらの病気がすべて、心理的・社会的な因子によって起こるというわけではありません。そういった因子が密接に関係する場合が多い、ということだと思ってください。

 

また、身体症状が全面に出る「神経症」や「仮面うつ病」なども心身症に含まれる場合があります。

 

 

 

≪心身症はこんな風に起こる≫

心理的・社会的因子がどのように体の病気を引き起こすかということを、胃潰瘍を例にとってお話ししましょう。

 

胃潰瘍は、俗に「ストレス病」と呼ばれるほど、心理的な因子が強い病気です。

 

仕事上のことや人間関係など、強いストレスがかかると、自律神経の働きで、胃の中の血管が痙攣したり、収縮したりして、胃の内側を保護してくれている粘膜は傷がつきやすくなります。

 

 

その一方で、食べ物を消化するために分泌される胃酸は、普段よりも多く分泌されるために、食べ物だけではなく、傷ついて弱くなった胃の粘膜をも溶かしてしまうことになります。

 

こうして、胃の粘膜が傷つき、潰瘍ができてしまうものが胃潰瘍というわけです。

 

胃潰瘍は、薬で治すこともできますが、ストレスがなくなった途端に自然に治ってしまうことも少なくありません。

 

 

 

 

≪ストレスが心身症の温床≫

人生に悩みやストレスがある限り、私たちは、どの年代でも心身症にかかる可能性があります。

 

たとえば、子どもなども例外ではありません。

 

特に、最近の子どもは加熱した受験戦争や、ますます陰湿化するいじめ問題など、大人にも想像できないようなストレスにさらされています。

 

そのために、頭痛や腹痛を始めとして、下痢や指しゃぶり、夜尿、夜驚症、チックなど様々な症状が心身症として現れます。

 

少し年齢が上がって、思春期になると、心身症はさらに複雑になります。

 

心身ともに不安定な時期に起こりやすいのは、神経性食思不振症などの摂食障害です。

 

成人してからは、仕事のストレスや職場での人間関係のストレスなどにより、胃潰瘍や高血圧症、心筋梗塞、糖尿病など成人病と絡んだいろいろな病気が起こりやすくなります。

 

 

やがて、だれもが迎える老年期。自ら自覚できる心身の老い、社会からの孤立感、親しい人たちとの死別など大きなストレスをかかえて、これもまた様々な心身症の温床となるのです。

 

 

≪こんなタイプの人は要注意≫

心身症は誰でもかかる可能性のあるものですが、特に心身症にかかりやすい人の特徴というのが、最近わかってきました。

 

たとえば、心臓病でも胃潰瘍でも、気管支ぜんそくでも、もともとなりやすい体質というのが基礎にあります。

 

それに加えて、不規則な生活や暴飲暴食、喫煙、お酒の飲みすぎ、運動不足など乱れた生活習慣が病気を増長させます。

 

こういった生活因子とともに、「タイプA」と呼ばれる性格をもった人たちに心身症がとても多いのです。

 

タイプAというのは、非常に野心があって競争心が強く、できるだけ高い地位につきたいという意欲が強い努力家タイプです。

 

そのために、いつも時間に追われ、せっかちなのですが、反面神経質な面もあり、うまくことが運ばないと非常にいらだちます。

 

一方、心身症になりやすいタイプのもうひとつの特徴として、代表なのが「失感情症・失体感症」とよばれるものです。

 

失感情症というのは、自分の感情の動きに気が付いたり、それを表現したりするのが下手なタイプのことです。

 

また、失体感症というのは、空腹や疲労など自らの生命活動を維持していくための体内からのサインに気づきにくいタイプのことをいいます。

 

これらのタイプは、周囲の環境や自らの生活行動によって、自分の感情に不適応が生じたり、ストレスがたまったりしていてもそれを適切に把握することができません。

 

自分の感情にまったく気づかずに、無理な生活を続けていくために、やがて身体の方が悲鳴をあげてしまうのです。

 

しかも、神経症の方などは、すぐに適応障害を訴えて会社や学校に行かなくなったりしますが、逆に、失感情症タイプの人は、自分の心身が悲鳴をあげているのに、それを抑えて登校や出社を繰り返します。

 

いわゆる過剰適応といわれるものです。

 

 

つまり、心身症になりやすいタイプというのは、努力家でまじめ、何事にも一生懸命、自らを犠牲にして仕事や勉強に励むという実に良い性格をしている人たちなのです。

 

ただ、それも度が過ぎると、自らの身体を傷める結果となってしまいます。

 

 

 

自分で思い当たるふしがある人は、少しずつでも改善していくような努力が必要でしょう。