病気は現代を写す鏡ともいわれています。

 

病気は、その時代の社会の特徴や背景を描き出す1つの指標でもあるのです。

心の病気の分野でも例外ではありません。

このストレスに満ちた時代になって、それを反映するように最近では「○○シンドローム」や「○○症候群」と呼ばれる新しい心の病気がたくさん出現しています。

 

これらは、正確な病名ではありませんが、ある意味では現代という時代の心の病気の特徴を端的に表しているものといえるでしょう。

また、これらの病気の全てとはいいませんが、ストレスが大きく関わっているものも少なくありません。

シンドローム(症候群)の代表的なものをいくつかあげてみましょう。

 

 

≪テクノストレス症候群‐ハイテク機器にふり回された末に≫

もともとは、アメリカの心理学者クレイグ・ブロードが命名した症候群です。

ビジネス社会に広く行き渡っているコンピュータの技術者に起こる独特の心理状態です。

テクノストレス症候群は、大きく分けると2つの種類に分かれます。

 

・コンピュータ不安型

不安型というのは、コンピュータの操作がどうしても理解できなかったり、コンピュータを導入された会社の体制についていけなかったりするタイプです。

特に、管理職の人などは、根が真面目なだけに一所懸命勉強するのですが、年齢的にどうしても理解し、マスターすることができず、若い人にどんどん取り残されるような気がします。

そのために、この病気におちいる例が多くあります。

また、中には自分はコンピュータに使われているのではないか、という不安や抑うつが現れるタイプもいますが、これも不安型の1つといえるでしょう。

 

・コンピュータ依存型

こちらは逆に、コンピュータにはまりすぎるタイプです。

コンピュータの世界にはまりこみすぎるあまりに、全てが「イエス・ノー」で割り切らなければ気がすまなくなり、普通の人間関係などがわずらわしくなってしまうものです。

 

本人は不便を感じないだけに、不安型より深刻です。

 

 

≪燃え尽き症候群‐仕事の使命感の果てに挫折≫

がむしゃらに、「仕事・仕事」と張り切っている人がかかりやすい病気です。

仕事に夢中になっている人が、やがて燃料切れで動かなくなる車のように、仕事に疲れ果て、何もやる気が起こらなくなるというのがこの病気です。

命名したのは、アメリカの心理学者ハーバード・フロウデンバーガー博士。

もともとは、アメリカの看護師さんたちの間で多くみられるものでした。

患者の命を救おうという希望に燃えて、看護師という職業についたのに、実際の臨床の現場では、なかなか思うようにそれが実現できません。

 

しかも、アメリカの看護師という職業は、専門職として地位も高く、それだけに責任も重いので、そのストレスは相当のものです。

理想と現実とのギャップ、さらに重くのしかかるストレスのために、自信と仕事への意欲を失ってしまう…これが、アメリカの燃え尽き症候群の始まりでした。

 

ストレスフルの現代のビジネス社会では、この病気は看護師という職業に限らず、いろいろな職業に見られるようになりました。

日本では特に、働き盛りで、そのうえ、責任感の重くなる中間管理職に多くみられるようになっています。

 

 

 

病気は現代を写す鏡ともいわれています。病気は、その現代の社会の特徴や背景を描き出す1つの指標でもあるのです。

心の病気の分野でも例外ではありません。

 

≪5月病‐難関を突破した後の無力感≫

子どもの数は減ってきているというのに、ますます加熱傾向を帯びてくるのは受験戦争です。幼い頃から、ハイレベルとされる学校へ入ることだけが目的の塾通い。なんとか、ゴールの大学へたどり着いたものの、入学の喜びも興奮も一段落した5~6月頃に何となく、体がだるくなったり、気持ちがふさぎこんだりというような不定愁訴が始まる病気です。

 

これまでは、自分の意志とは全く関係なく、ひたすら親のいいなりになって、与えられた勉強をこなしてくるだけだった自分の生き方に、初めて疑問を持つために起こるのです。

 

大学だけではなく、会社に入社したての新入社員に起こることもあります。

これも、「自分の進む道はこれでよかったのだろうか」と悩むことから端を発して起こるものです。

 

≪スーパーウーマン症候群‐女性の頑張り屋が限界を超えると≫

女性の社会進出が盛んになり、結婚しても仕事を続ける女性が増えています。

それ自体は非常に喜ばしいことなのですが、中には、仕事も家族も育児も…と頑張りすぎてしまう女性もいます。

 

しかし、所詮1日は24時間しかないのですから、それらを全て完璧にこなそうとすると、これもまた大きなストレスとなり、いつの日か破綻をきたしてしまいます。

 

心身症になったり、うつ状態になる女性もいます。これをスーパーウーマン症候群といいますが、もとは、アメリカの同名の小説から名付けられたものです。

 

≪空の巣症候群‐愛児が巣立って残された母親が≫

働いている人や学生だけでなく、家庭にいる主婦も例外ではありません。さんざん手塩にかけて育てた子どもがやがて一人前になって独立した時に、何とも言えぬ虚無感、寂しさ、厭世(えんせい)観などに襲われて気分が沈み込む病気です。

 

少子化が進み、今や各家庭には1~2人の子どもしかいません。

少ない子どもに、ありあまるほど手をかけて育てるために、育てる対象がいなくなった後に、生きがいを失って起こるものです。

小鳥が巣立っていって、空の巣で親鳥が悲しんでいるというところから名付けられました。