「うつ」は、大きな社会問題になっています。

うつ病の行き着く先は自殺となりかねません。

うつ病と自殺による社会的損失は、国立社会保障・人口問題研究所の推計でなんと2兆6782億円(2009年)と報告されています。

 

社会人から学生、主婦、高齢者に至るまで、うつは広がっています。

うつは「心の風邪」とも言われますが、まさに現代病と言ってもいいでしょう。

うつは不眠と切っても切れない関係にあります。

うつ病の方のほとんどが、不眠の問題を抱えています。

およそ8割の方に中途覚醒や早朝覚醒などの不眠症状があります。

また、約2割に過眠症状(日中に強い眠気を感じる)も認められます。

 

今、うつは大きく2つに分類されています。

定形うつ病と非定型うつ病です。

定型うつ病は、いわゆる従来の大うつ病です。

非定型うつ病は、最近若い人たちに急増している新しいタイプのうつ病です。

こちらの方が、現代文明病と言ってもいいかもしれません。

 

同じうつ病でも、定型と新しいタイプの非定型では症状が対照的です。

定型は、自責の観念が強くなり、自分で自分を責める、非定型は排他的です。

他罰的で他人を非難する。

また定型は食欲不振で痩せる傾向があります。

加えて、寝不足気味で、特に朝方の調子が悪いなどです。

一方、非定型は食欲が増進して太りやすく、過眠傾向にあります。

また、夕方になると孤独感が高じて調子を崩すことが多いのです。

非定型のうつは、過眠を伴うと言っても眠りが非常に浅いのが特徴です。

うつらうつらしながら、長時間寝床で横たわっていることは決して良い睡眠とはいえません。

このような不規則睡眠がうつ病を引き起こす原因の1つとなっていると考えられています。

 

アメリカのジョンズホプキンス医科大学で、ある大がかりな追跡調査が行われました。

学生時代に不眠を経験した人のその後を、およそ35年間の長期にわたって調べたところ、うつ病になった人がきわめて多いという結果が出たのです。

 

うつ病になる前兆、つまり、うつ病前段階にも眠りが関係しています。

本格的なうつ病になる1年くらい前に、不眠が前駆症状(ある病気の起こる前兆として現れる症状)として現れるケースがあります。

しかし、うつと睡眠障害は、ニワトリと卵のような関係にあるものです。

うつだから眠りが崩れ、眠りが崩れるからうつがさらに進行する…このような悪循環を繰り返すのです。

 

事実、うつで休職しているのですが、なかなか復職できない人がいます。

このような人は、不眠が治りにくいのです。

うつ病が治ったとしても、不眠や過眠が改善していないと、再びうつになる確率も高くなります。

つまり、再発しやすのです。

うつ病が治っているのに残っている不眠は、「うつ病治療後不眠症」と呼ばれます。

 

一見、慢性的なうつ状態のように見えていても、実は生活が不規則なだけで睡眠のリズムが狂っているに過ぎないという場合も多数あります。

要するに、昼間は元気なく見えるのだけれど、夜に外が暗くなると楽しくなる夜型の人たち、現代人のライフサイクルに起因する悪循環です。

 

このようなケースでは、メンタル面の治療ばかりを進めても、なかなか治りません。

まず睡眠の時間や質だけでなく、睡眠の時間帯までを改善することが先決なのです。

 

うつのほとんどは何らかの睡眠障害を合併すると言っていいでしょう。

まずは、睡眠の量(時間)、質(深さ)、そして時間帯の乱れを正すことです。