たとえば、ストレスによってまずは「肝」の働きがダメージを受けやすいのですが、これは、「気持ち」の変化や体の違和感といった、「もしかしたら、気のせい?」というレベルの不調ともいえます。

しかし、さらにストレスがかかると、「心」の働きに異常をきたし、「通勤ラッシュでドキドキする」といった、「これって、ちょっと異常じゃない?!」とはっきりと自覚できる不調となってあらわれます。

 

東洋医学では「肝」が「心」のアクセルの働きをしていると考えられていて、このような関係を「相生関係」といいます。

また、「肝」を母、「心」を子の関係としてとらえ、母である「肝」の働きが乱れると、その影響は子の「心」に悪影響を及ぼすと考えられます。

さらに今度は「心」の異常は「肺」の働きを抑える形の不調となって連鎖すると考えられていて、この「心」と「肺」は「相克の関係」といい、「心」が「肺」の働きを抑制する、ブレーキの役割をする関係性になっています。

本来はアクセルとブレーキがほどよく作用することで、五臓がバランスよく働きます。

しかし、アクセルもブレーキも、結局は関係するほかの臓に影響を与えることに変わりなく、その影響が悪影響になる場合があります。

 

そのため、仮に「これって、ストレスによる不調かな?」と気づいたのが、食欲がなくなり体がだるいといった「脾」の異常があらわれている段階であったとしても、「脾」の対処だけを行うのでは、ストレス不調を本当に改善するには不十分なのです。

「脾」へのアプローチだけの場合、不調を自覚した前段階に生じていた「肝」や「心」、「肺」による不調に対してはノーケアとなってしまうからです。

「脾」の不調以前の問題が解決されていないと、「脾」自体の不調もなかなか改善されず、「いろいろ対処法をやってみたんだけど、あまり調子が上向かないな…」と無力感を覚えることにもなりかねません。

 

そうしているうちに、それ以前の不調の度合いが深刻になることも考えられるほか、次の段階にくるであろう「腎」がダメージを受けた不調も出てきてしまうというように体調不良が進んでしまう危険性もあるのです。